インターネットの掲示板や古い飼育情報で時折見かけるのが、「カブトムシをバケツの水に数分間沈めれば、ダニが窒息してプカプカ浮いてくる」といういわゆる「水没退治法」です。手軽にダニを一掃できそうに思える手法ですが、これは生体にとって命取りになりかねない極めて危険な行為です。
昆虫の呼吸器官である気門には、微小な毛が生えており一定の撥水性を持っています。しかし、完全に水中に沈められると気門内部に水が浸入し、呼吸が完全に停止します。カブトムシはある程度の時間なら仮死状態で耐えられる構造を持っていますが、水圧や水温、生体の体力によっては、わずか数分間の水没でも蘇生できずにそのまま溺死・窒息死する事例が多発しています。
皮肉なことに、標的であるダニ類は体表のワックス層や表面張力によって微細な空気の泡(エアフィルム)をまとい、水面下でも数時間平然と生き延びる強靭な耐水性を持っています。つまり、ダニが死滅するよりもはるか前に、カブトムシ自身が力尽きてしまうのです。手っ取り早い解決を求めて愛着ある生体を危険に晒す水没法は、現代の飼育水準では絶対に避けるべきNG手法と断言できます。