中華料理店で提供される鶏肉とカシューナッツ炒めを口にしたとき、もっとも印象的なのは鶏肉の圧倒的な柔らかさとしっとり感です。家庭で調理すると肉の水分が抜けて縮みやすいのに対し、プロの厨房では「上漿(シャンジァン)」と呼ばれる中華の伝統的な下味・保水コーティング技法が徹底されています。
鶏肉(もも肉・むね肉問わず)は、加熱によってタンパク質(アクチンやミオシン)が熱変性し、約65度を超えたあたりから内部の水分を急速に絞り出してしまいます。これを防ぐためには、切った鶏肉にまず水分(酒・醤油・少量の水)を揉み込んで保水させ、卵白またはマヨネーズを絡めた後、片栗粉で表面に薄い膜を形成します。最後に少量の油を回しかけて肉同士をコーティングすることで、加熱時の水分蒸発を物理的にブロックする仕組みです。
この下処理を施した鶏肉は、フライパンで強火加熱しても内部の肉汁が外へ逃げず、外はツルリと滑らかで中は驚くほどジューシーな仕上がりを維持できます。さらに、具材の大きさをカシューナッツと同等の「1.5cm角」に揃えて均一にカットすることで、火の通りが均一になり、一部の肉だけが加熱過多で硬化する失敗を完全に防ぎます。