保険不要論者がよく挙げる根拠に、日本の優れた公的医療保険制度がある。確かに、1カ月の自己負担額に上限を設ける高額療養費制度を活用すれば、一般的な年収の会社員なら毎月の医療費窓口負担は8万円〜10万円前後に抑えられる。がんなどの先進医療や長期入院であっても、制度上の上限が適用されるため、破産に至ることは稀に見える。
だが、ここには大きな落とし穴が存在する。高額療養費制度の対象外となる「差額ベッド代」や「入院中の食事代」「雑費」「通院のための交通費」はすべて全額自己負担だ。個室に入院すれば1日あたり数千円から1万円以上の差額ベッド代がかかり、1カ月で十数万円の出費となることも珍しくない。公的保障だけで安心しきっていると、退院後に手元資金が底をつき、生活基盤が大きく揺らぐ事態を招きかねない。