「宇宙の黒騎士」というロマンあふれる呼び名が世に定着した背景には、複数の不可解な観測記録が複雑に絡み合った歴史があります。発端として語られるのは、人類がまだ人工衛星を一隻も打ち上げていなかった1950年代後半、アメリカやソ連のレーダーが「極軌道を周回する巨大な未確認物体」を探知したというセンセーショナルな報道でした。
当時、地球の自転と平行に飛ぶ通常の軌道ではなく、北極と南極を結ぶ極軌道に衛星を投入する技術は米ソ双方ともに未確立でした。そのため、「米ソ以外の第三勢力、あるいは異星人の遺物ではないか」という憶測が一気に拡散したのです。そこに、スコットランドの天文学者ダンカン・ローナンが1973年に発表した「長期遅延電波エコー(LDE)の解読パターン」が重ね合わされ、「うしかい座イプシロン星から約1万3000年前に飛来したエイリアン遺物説」という壮大なストーリーへと発展していきました。