SNSや大手Q&Aサイトを検証すると、「健康診断の血液検査で貧血と言われなかったのに爪がスプーン状になった」「ネイルサロンで貧血を指摘されて受診したが異常なしだった」という戸惑いの声が数多く見受けられます。ここに、一般的な健康診断の落とし穴が存在します。
職場の一般健診や人間ドックで測定されるのは、主にヘモグロビン(Hb)値です。しかし、体内における鉄の動態は「財布の中の現金(ヘモグロビン)」と「銀行の定期預金(フェリチン)」に例えられます。貧血の初期段階では、体が生命維持のために定期預金(フェリチン)を崩して現金を維持するため、ヘモグロビン値は見かけ上、正常範囲内にとどまります。この状態は「潜在性鉄欠乏(かくれ貧血)」と呼ばれ、血液検査の数値に現れる前に、代謝回転の早い爪や毛髪に真っ先にダメージが表面化するのです。
都内の皮膚科専門医は取材に対し、「『検査で異常がなかったから体質だと思っていた』と語る患者の多くに、血清フェリチンを測定すると10ng/mL以下という重度の枯渇が見られる。爪は数値の遅行指標ではなく、枯渇の先行指標であるケースが極めて多い」と指摘します。一般検査の「異常なし」という判定を過信せず、爪のサインを独立した所見として捉える複眼的な視点が欠かせません。