五番街をより深く味わうためには、その五番街歴史経緯と、日本で定着している文化的イメージの背景を知ることが役立ちます。
19世紀初頭まで、五番街は単なる未舗装の農道に過ぎませんでした。しかし19世紀後半の「ギルデッド・エイジ(金ぴか時代)」と呼ばれる好景気期に、アスター家やヴァンダービルト家といった大富豪たちが豪邸を構えたことで、全米屈指のプレステージ・ストリートへと変貌を遂げました。20世紀に入ると高級商業地区へとシフトし、現在の洗練された景観が完成しました。
一方、日本人にとって「五番街」と聞くと、ペドロ&カプリシャスの昭和の名曲『五番街のマリーへ』(1973年・作詞:阿久悠)を思い浮かべる方も多いでしょう。この曲に登場する「五番街のマリーへ 意味」について、「ニューヨークの五番街に住む女性を歌ったものなのか?」という疑問が頻繁に語られます。
しかし、阿久悠氏の手記や音楽史の記録によると、この楽曲で描かれた舞台は実在のニューヨーク五番街そのものではなく、「どこか哀愁漂う架空の異国の街角」という情緒的なシンボルとして名付けられたとされています。実際のニューヨーク五番街が放つ圧倒的なメガロポリスの輝きと、歌詞の世界観にあるノスタルジックな切なさは、ある意味で対極に位置するコントラストと言えます。こうした背景を知っておくと、街を歩く際の旅情がいっそう深まります。