「年をまたいでそばを食べてはいけない」と言われる背景には、江戸時代中期から培われてきた民間信仰と生活の知恵が深く根差しています。年越しそばの由来と意味には、主に以下の4つの柱があります。
1つ目は「厄災の断ち切り(縁切り)」です。そばは他の穀類で作られた麺(うどんやラーメン)に比べて切れやすい特徴を持ちます。この物性から「今年の苦労や借金、厄災をキレイさっぱり切り捨てて翌年に持ち越さない」という願掛けが込められました。しかし、午前0時を過ぎて年をまたぎながら麺をすすってしまうと、「前年の厄災や悪縁を新年に引きずり込む」と解釈されるため、大凶のタブーとして忌み嫌われたのです。
2つ目は「延命長寿・家運長命」の祈願です。細く長く伸びる麺の形状から、健康長寿や一家の繁栄を祈る意味合いがあります。3つ目は、金銀細工師が作業場に飛び散った金粉を集める際、そば粉を練った団子を使った故事に由来する「金運上昇・福を集める」ご利益です。
ここで見落とされがちなのが「年越しそばを残すとどうなるのか」という問題です。民間伝承では、器にそばを残して新年を迎えると「新年に金運が逃げる(借金が残る)」と戒められてきました。深夜に大盛りを作って食べきれなくなったり、年またぎを恐れて途中で箸を置く事態は最も避けたい状況です。「残さずきれいに食べ切れる分量」を意識することが、年越しそばにおける最大の作法と言えます。