リスニングの現場で日本人が最も強く壁を感じるのが、アメリカ英語とイギリス英語の発音の違いです。音響音声学の観点から分析すると、主に3つの決定的要素に集約されます。
第1に「R音の調音(Rhoticity)」です。アメリカ英語は母音の後ろにある「r」を舌を奥に引いてしっかり響かせます(Car, Water, Hardなど)。対照的にイギリス英語(標準容認発音)は、直後に母音が続かない限り「r」を発音せず、母音を長く伸ばすか、曖昧母音(シュワ)として発声します(Carは「カー」、Waterは「ウォータ」)。
第2に「Tのフラップ化(Flapping)」です。アメリカ英語では母音に挟まれた「t」が軽い「d」や日本語の「ラ行」に近い音へ変化します(Waterが「ワラー」、Betterが「ベラー」)。一方のイギリス英語では「t」を弾くように明確に破裂させ、明瞭な「ウォータ」「ベター」と発音します。
第3に母音の響きです。「Hot」「Box」「Coffee」などの「o」の音は、アメリカ英語では口を縦に開いた「ア」に近い非円唇後舌母音[ɑ]になるのに対し、イギリス英語では唇を丸めた深い「オ」の円唇後舌母音[ɒ]になります。また「Can't」「Fast」「Dance」の「a」も、アメリカ英語が平べったい[æ](エァ)なのに対し、イギリス英語では喉の奥を開いた深い[ɑː](アー)で発声されます。
さらにイギリス英語とアメリカ英語のイントネーションの差も会話の印象を大きく左右します。アメリカ英語は文全体が滑らかに波打つように推移するのに対し、イギリス英語は音節ごとのメリハリが強く、疑問文でなくても語尾を一段落として着地させる「鋭角なリズム感」を持ちます。このリズムの差が、イギリス英語特有の「歯切れがよく理知的な響き」を生み出しています。
これらはテスト対策でも決定的な意味を持ちます。ETS公式の出題基準に基づくアメリカ英語 イギリス英語 TOEICリスニング対策では、ナレーターの発音比率(アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアが均等に割り振られる傾向)を前提に、特にイギリス人・オーストラリア人ナレーター特有の「tの強い破裂音」や「伸びる母音」に耳を順応させておくトレーニングがスコアアップの分水嶺となります。