「なぜ高島市の人気パン屋はこれほど早く売り切れてしまうのか」。その疑問の真相を探るべく現場のオペレーションを追うと、職人たちの妥協なき哲学が見えてきます。
象徴的な一例が、今津町で評判を集める「Boulangerie &PAN(アンドパン)」です。ローカルメディア等の取材でも明かされている通り、オーナーシェフの山本進一郎さんは元料理人という異色の経歴を持ちます。「パンと料理、お菓子、様々なシーンに寄り添うパン」を掲げ、食べる前だけでなく食べた後までワクワク感が続く味わいを追求しています。水分量を極限まで高めたしっとり・ふんわり食感の生地や、料理人ならではの感性で構築された具材の組み合わせは、一度口にすると忘れられない深い余韻を残します。
また、市内には伝統的な景観を残す高島市古民家パン屋や、薪窯で焼き上げる高島市ハード系パン名店、さらに時間をかけて発酵させる滋賀県高島市天然酵母パンの工房が点在しています。これらのお店が午前中で完売してしまう理由は明快です。冷凍生地や添加物による大量生産を一切行わず、職人が一人または夫婦で1日数回に分けて生地を仕込み、一窯ずつ丁寧に焼き上げているためです。物理的な生産上限が1日数百個に限られているからこそ、開店直後から行列ができ、争奪戦が巻き起こるのです。