結論から言えば、回収ボックスの急増は「善意のリサイクル」ではなく火災という切迫したリスクへの防衛策だ。環境省と消防庁の公開資料、廃棄物処理業界団体の報告を総合すると、全国のごみ処理施設で報告されるリチウムイオン電池関連火災は2026年代に入り右肩上がりで推移。2026年度には全国で年間1万件を超える発火・発煙トラブルが確認されたとのデータもあり、処理ラインの停止や車両火災、作業員の負傷事故が社会問題化してきた。
背景にあるのは、製品ライフサイクルの極端な短縮だ。スマートフォンの買い替え、ワイヤレスイヤホン、ハンディファン、電動シェーバー、加熱式タバコ。私たちの生活には充電式電池が埋め込まれた小型家電が溢れている。一般消費者のリテラシーが追いつかないまま「とりあえず不燃ごみ」に混ぜられるケースが後を絶たず、収集車の圧縮装置で潰された瞬間にショート・発火する。2026年には関東圏の複数自治体でごみ収集車両火災が連続発生し、そのうち数件はモバイルバッテリーが原因と断定されたことが報道各社の取材で明らかになっている。
「家庭から出る小型充電式電池は、もはや『ごみ』ではなく『危険物』としての扱いが標準になりつつあります」——廃棄物行政に詳しい環境コンサルタントの指摘は、現場の空気を端的に表している。回収ボックスの増設は、この構造的リスクを街中で分散して吸収するためのインフラ整備であり、決して一過性のエコ施策ではない。