ネット上のメイキング動画やSNSのTipsを見ていると、「筋肉の溝を濃い線でひたすら塗りつぶす」ような解説を見かけることがあります。しかし、これは作画を平面的に見せてしまう典型的な誤解です。
筋肉の陰影 立体感の出し方において最も重要なのは、筋肉の溝そのものに影を描くことではなく、「面が光に対してどの角度を向いているか」によって明暗のトーンを分けることです。
球体や円柱における「明暗境界線(ターミネーター)」を把握し、光が当たるハイライト面、緩やかに影へ移行するハーフトーン、そして完全に遮光されるシャドウ部を階調として捉えます。特に、筋肉同士の深い隙間には「アンビエントオクルージョン(環境遮蔽)」と呼ばれる局所的な濃い影が落ちますが、それ以外の広い面には床や周囲の皮膚からの「反射光」が回り込みます。
溝のラインを単色の真っ黒な線で縁取ってしまうと、皮膚がひび割れたような質感になり、肉体特有の弾力と厚みが損なわれます。線画で筋肉を表現する場合も、光が強く当たる盛り上がりの頂点では線を意図的に途切れさせ(抜け感)、影が落ちるくぼみ側にだけ短いハッチングや太い線を配置するのが、洗練されたイラストレーションのセオリーです。