被疑者やその家族が最も恐れるのが、「事件が実名でニュース報道されるのか」「勤務先や学校に発覚して懲戒解雇になるのか」という点です。
大手新聞社やテレビ局などの報道機関には、事件報道に関する厳格な内部基準が存在します。一般的に、逮捕事案に比べて書類送検事案の実名報道率は著しく低位に留まります。身柄拘束を伴う逮捕は「警察による公的な強制処分の執行」として速報性が高いのに対し、書類送検は日常業務の中で粛々と行われる書類送付手続きであるためです。
ただし、以下の要件に該当する場合は、書類送検であっても大々的に実名報道される対象となります。
- 公務員、政治家、上場企業役員、著名芸能人・インフルエンサーなどの社会的影響力が高い立場にある人物の事件
- 交通死亡事故や重大な過失致死傷、多額の横領など、社会的反響や被害結果が極めて重大な事件
- SNS上の誹謗中傷、新手のサイバー犯罪、社会問題化している特殊詐欺グループへの関与など、警鐘を鳴らす公共の利害性が高い事案
勤務先への影響については、書類送検されたこと自体を警察が会社へ能動的に通報することは原則としてありません。逮捕と異なり身柄拘束がないため、警察や検察への出頭日を有給休暇などで調整できれば、会社を無断欠勤することなく社会生活を継続できる可能性が高くなります。
しかし、企業の就業規則には「刑事事件で起訴された場合の届出義務」や「会社の信用を著しく失墜させた場合の懲戒規定」が設けられていることが通例です。事件が実名報道された場合や、起訴されて罰金刑以上の有罪判決が確定した場合には、就業規則違反として懲戒解雇や諭旨退職といった重い処分が下されるリスクを排除できません。