本作が放送から十数年を経た現在も語り継がれる最大の理由は、日向徹と夏井真琴というキャラクター造形の解像度の高さにあります。天才的なプログラミング技術と直感を持ちながら、心因性認識不全症候群により人の顔と名前を覚えられない日向。一方、真面目で努力家でありながら不器用で、内定が取れず焦燥感を募らせる真琴。この二人が互いの欠落を埋め合っていく心理描写は、脚本家・安達奈緒子氏の緻密な構成力によって極めてリアルに描かれました。
特に視聴者の心を捉えて離さなかったのが、物語終盤に散りばめられた名シーンの数々です。中でも最終話における空港での告白シーンと伝説のキスシーンは、テレビドラマ史に残る屈指の名場面として挙げられます。「お前のことが好きだ」と素直に認められない不器用な日向が、論理ではなく感情で真琴を引き留める刹那の演技は、小栗旬の抑制されたエモーションと石原さとみの溢れ出す涙が見事なハーモニーを生み出していました。
さらに、続編となった『リッチマン、プアウーマン in ニューヨーク』では、生活習慣や仕事に対する価値観の違いに直面する二人の大人の関係性が描かれ、ラストの朝の光の中でのキスシーンに至るまで、作為を感じさせないナチュラルな空気感が視聴者を魅了しました。