「考えるのをやめた」というフレーズの初出は、週刊少年ジャンプ(集英社)で1987年から1989年にかけて連載された『ジョジョの奇妙な冒険 Part2 戦闘潮流』のクライマックスです。主人公のジョセフ・ジョースターと死闘を繰り広げた敵の首領・カーズの最期を描いたナレーションの一節に由来します。
カーズは、作中に登場する謎の石仮面によって、地球上のあらゆる生物の能力を併せ持ち、不老不死となった「究極生命体(アルティミット・シィング)」でした。弱点であった太陽光すら克服し、いかなる波紋攻撃も通用しない文字通りの無敵存在となったカーズに対し、主人公のジョセフは正面からの撃破を完全に断念。ヴォルガノ火山の噴火エネルギーを利用して、カーズを岩盤ごと大気圏外へ吹き飛ばすという奇策に出ました。
体内の空気を噴射して地球へ帰還しようとしたカーズでしたが、宇宙空間の絶対零度に触れた瞬間に噴出物が氷結。推進力を失い、重力圏を完全に脱出してしまいます。その直後に挿入されたのが、以下の伝説的なナレーションです。
「カーズは――2度と地球へは戻れなかった… 鉱物と生物の中間の生命体となり 宇宙を永遠にさまようのだ。そして 死にたいと思っても死ねないので ――そのうちカーズは 考えるのをやめた」
著者の荒木飛呂彦氏は、自著『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)などのインタビューにおいて、「絶対に殺せない敵をどう決着させるか」というロジックの極限を突き詰めた結果、「死ぬことすらできない永遠の追放」という過酷な運命に辿り着いたと述懐しています。肉体的に無敵である存在の精神が自発的に停止する――この冷徹で詩的な結末が、読者に強烈な衝撃を与えました。