なぜ数あるクラシックやポップスの中から、この『おもちゃの兵隊の行進』が選ばれたのでしょうか。当時の番組制作資料や社史の証言によると、決め手となったのは「キユーピー人形の動き」と「料理のテンポ感」の完全な合致でした。
番組がスタートした昭和30年代後半、オープニングにはコマ撮り(ストップモーション・アニメーション)によるキユーピー人形のダンス演出が導入されました。1コマずつ人形のポーズを変えて撮影する手法において、明確な拍子と跳ねるようなスタッカートを持つイェッセルの行進曲は、人形がまるで命を宿して歩き出すかのような映像同期を実現する上で最適だったのです。
さらに、番組のコンセプトである「手軽に手早く作れる家庭料理」のイメージにも、2拍子の行進曲が持つ前向きな推進力が合致します。重々しい本格料理番組ではなく、日々の台所を楽しく軽快な作業場に変える演出効果として、このメロディ以上にふさわしい選択肢は存在しなかったと言えます。