セミの幼虫を口にした人が判で押したように口にするのが、「香ばしいナッツの風味」という表現です。これは決して大げさな比喩ではなく、樹液を長年吸い続けて蓄えられた良質な脂肪分とタンパク質が、加熱によってローストしたアーモンドや落花生のような芳醇なアロマへと変化するためです。噛みしめると濃厚でクリーミーな旨味が広がり、エビやカニ、あるいはソフトシェルクラブに極めて近い満足感を得られます。
ここで気になるのが、セミの成虫と幼虫の味の違いです。羽化した後の成虫は、飛行のために胸部の筋肉が発達しており、鶏肉のようなしっかりとした繊維感と歯ごたえがあります。ただし、成虫はキチン質の外骨格や羽が硬く、口の中に残りやすいのが難点です。一方の幼虫は、皮が薄く中身が詰まっており、ジューシーで雑味がありません。昆虫食の初心者にとって圧倒的に食べやすく、食材としての評価が群を抜いて高いのは間違いなく幼虫の段階です。