フランスのアトゥ・フランス(フランス観光開発機構)やイタリア、中東諸国などでは、政府や自治体が客室の平米数、エレベーターの数、フロントの営業時間などを法令で細かく定め、国家基準としてホテルに1つ星から5つ星(あるいはパラス称号)を付与する公式格付け制度が整備されています。しかし、日本の旅館業法には設備基準や衛生管理の規定こそあれ、グレードを評価して星を割り振る仕組みは一切設けられていません。
5つ星ホテルが日本に少ない理由として長年指摘されてきたのは、日本の宿泊文化が培ってきた「旅館」と「西洋型ホテル」の二重構造です。日本には古くから、客室の広さや画一的な設備スペックだけでは測れない「おもてなし」の美学が存在していました。数値化されたハードウェア基準を設けると、小規模ながら極上のサービスを提供する老舗旅館や隠れ家的な宿が不当に低評価を受けてしまう懸念があったため、官公庁主導の格付け制度が導入されてこなかった歴史的背景があります。
したがって、現在日本で「5つ星」として認知されている施設は、自社マーケティングで称しているか、あるいは世界的権威を持つ海外の民間格付け機関から最高評価を獲得したホテルのいずれかです。公的なお墨付きがないからこそ、どの国際機関からどのような評価を受けているかを正確に読み解く視点が不可欠となります。