土俵を途中休場した際、新聞や公式発表の星取表に記される表記について、一般にはあまり知られていない厳格なルールが存在します。
初日から本場所を休場した場合は全日程が「や(休)」と記載されますが、場所の途中で怪我をして翌日から休場した場合、休場初日のみ相手力士への不戦勝(□)が与えられ、横綱側には不戦敗を示す「黒四角(■)」が星取表に刻まれます。これが横綱不戦敗星取表の正式な記録方式です。翌日以降は「や」の扱いとなり、勝敗の数字には加算されません。
ネット掲示板やSNSでは、序盤に数日出場して黒星が先行した途端に休場する姿に対して「負けが込んだから仮病で逃げたのではないか」という厳しい声が散見されます。しかし、現場の力士や親方衆の証言は全く異なります。
横綱は「皆勤して二桁勝利」どころか「優勝争いに絡むこと」が最低限の義務とみなされる絶対的な地位です。3敗や4敗を喫した時点でその場所の存在意義を失うだけでなく、無理をして土俵に上がり続けることで対戦相手に失礼な相撲を見せること自体が「横綱の品格を汚す」と解釈されます。途中休場は逃避ではなく、「無様な相撲を晒すくらいなら土俵を去る」という大相撲特有の美意識と残酷な掟の産物です。