桐生祥秀の足跡を語る上で欠かせないのが、滋賀県彦根市で過ごした中学時代から京都・洛南高校、そして東洋大学へと続く飛躍の軌跡です。洛南高校3年時の2013年4月、織田幹雄記念国際陸上において高校生・当時ジュニア世界タイ記録となる10秒01をマークし、日本中の視線を一気に集めました。
名将・土江寛裕コーチの指導を仰ぐべく進学した東洋大学の経歴において、最大のハイライトとなったのは2017年9月9日、福井運動公園陸上競技場で開催された日本インカレ男子100m決勝です。追い風1.8mの絶好のコンディションの中、電光掲示板に表示されたタイムは「9.98」。四半世紀にわたり日本人が超えられなかった「10秒の壁」を初めて打ち破った瞬間でした。
この100m自己ベスト「9秒98」は、単なる記録更新にとどまらず、サニブラウン・アブデル・ハキームや小池祐貴、山縣亮太らが後に続く「日本短距離黄金期」の扉を開く歴史的一歩となりました。さらに東洋大学在学中の2016年リオデジャネイロ五輪では、男子4×100mリレーの第1走者として銀メダル獲得に大きく貢献。個人のスプリント力のみならず、バトンパス技術を含めたチーム貢献度の高さは今なお語り継がれています。