このあまりにも有名なフレーズは、中国・唐代盛期の詩人である孟浩然(もうこうねん)が遺した五言絶句の代表作『春暁(しゅんぎょう)』の冒頭(起句)です。多くの人が冒頭の一節だけを記憶していますが、この漢詩の真骨頂は続きの句にあります。
まずは漢詩の全文、訓読、そして現代語訳を確認してみましょう。
【原文】
春眠不覚暁
処処聞啼鳥
夜来風雨声
花落知多少
【書き下し文】
春眠 暁を覚えず(しゅんみん あかつきをおぼえず)
処処 啼鳥を聞く(しょしょ ていちょうをきく)
夜来 風雨の声(やらい ふううのこえ)
花落つること 知るぬ多少ぞ(はなおつること しりぬたしょうぞ)
第2句にある「処処聞啼鳥」の読み方は「しょしょ ていちょうをきく」。「処処」はあちこち、「啼鳥」は鳥のさえずりを指します。
【現代語訳】
春の眠りは心地よく、夜が明けたのも気づかないほどだった。
ふと目覚めると、あちこちの木々から小鳥たちの澄んださえずりが聞こえてくる。
そういえば、昨夜は激しい風雨の音が吹き荒れていた。
庭の美しい花々は、いったいどれほど地面に散ってしまったのだろうか。
朝の穏やかな光景から一転、作者の意識は昨夜の嵐と散りゆく花へと向かいます。この鮮やかな対比こそが、千年以上色あせない文学的価値の源泉泉です。