「熱いものをそのまま冷蔵庫に入れてはいけない」と教えられてきた方は多いはずです。しかし、忙しい平日の夕食作りやお弁当作りの現場では、「早く片付けたいから」と湯気の立つタッパーを冷蔵室へ押し込んでしまうケースが散見されます。熱いまま冷蔵庫に入れる行為と、逆にコンロの上で何時間も常温放置する行為は、いずれも食品衛生と家電の機能面から見て明確なNG行為です。
まず、粗熱を取らずに冷蔵庫へ入れるNG理由には、熱力学および微生物学的な3つの弊害が存在します。
第1に、庫内温度の急激な上昇と他食材への熱被害です。現代の冷蔵庫は高い冷却性能を備えているものの、60〜80℃を超える大量の食品が急に入ると、センサーが反応しても庫内全体の空気温度が数℃〜十数℃上昇します。その結果、隣接して置かれている乳製品、生肉、生魚、作り置きおかずの表面温度が上がり、消費期限内であっても劣化や腐敗を招く原因となります。
第2に、激しい結露によるカビ・雑菌の繁殖です。熱い食品から放出される水蒸気が冷たい冷蔵庫の壁面や棚板、保存容器のフタの内側に大量の水滴として付着します。この結露水が料理に滴り落ちると、食品表面の水分活性が高まり、カビや細菌が急増する温床を作り出します。
第3に、冷蔵庫のコンプレッサーに対する過大な負荷と消費電力の激増です。設定温度に戻すために冷却ファンがフル稼働を強いられ、電気代が無駄にかかるだけでなく家電自体の製品寿命を縮める要因にもなります。
一方で、熱いまま入れるのを避けるあまり、常温で数時間放置してしまう行為も同等以上に危険です。食品安全委員会および厚生労働省の統計データによると、細菌性食中毒の多くは「20℃〜50℃」の温度帯で最も活発に菌が増殖することが証明されています。加熱調理によって一般的な病原菌(サルモネラ属菌や腸管出血性大腸菌など)は死滅しますが、一部の耐熱性菌は生き残り、粗熱が冷める過程の生ぬるい温度帯で猛烈なスピードで増殖を開始します。