近年の単身向け賃貸住宅やリノベーション物件では、空間を広く見せる目的や建築コスト抑制のために、洗面所や脱衣所の建具(ドア)を最初から設けない設計が目立ちます。しかし、いざ友人を招いた際、洗面台を案内すると脱衣カゴに溜まった洗濯物や脱ぎ捨てた部屋着が露わになり、気まずい思いをしたという相談が住宅相談窓口にも数多く寄せられています。
住環境心理学の観点からも、脱衣空間は個人の無防備な状態を保護する「心理的バウンダリー(境界線)」を形成する最重要エリアと位置づけられます。視線が筒抜けの環境では無意識の緊張が持続し、自宅でありながら十分なリラクゼーションを得られにくくなります。特にワンルームや1Kの間取りにおいて、洗面所と脱衣所の仕切りを物理的・視覚的に区切る処置は、住まい手の精神的な安心感を担保するために不可欠な環境調整といえます。