ネット上の情報の中には、「セミの抜け殻は死骸と同じだから縁起が悪い」「霊的な悪影響(陰の気)があるのではないか」といったネガティブな言説が散見されます。しかし、これは昆虫の生態に対する根本的な誤解に基づいています。
第一に、セミの抜け殻は「死骸」ではなく「生命が成長して巣立った痕跡」です。動物の遺骸が放つ腐敗のエネルギー(死気・陰気)とは本質的に異なり、抜け殻に残されているのは「殻を破って新世界へ飛び出した陽の達成エネルギー」です。この差異を混同して不吉とする説は、民俗学的にも風水的にも明確な誤謬です。
第二に、「セミは短命だから縁起が悪い」という俗説も科学的な事実と矛盾します。確かに成虫としての地上生活は1〜2週間から1ヶ月程度ですが、幼虫期の地下生活を含めると昆虫類の中でも極めて長寿な部類(3〜7年、北米の周期蝉では13〜17年)に属します。むしろ過酷な自然界で数年もの歳月を生き抜いた強靭な生命力の結晶こそが、あの抜け殻なのです。