1980年代前半、ヨーロッパを発信源として世界中を席巻したイタロ・ディスコの象徴が、イタリア人シンガー・ガゼボが1983年に発表した『I Like Chopin』でした。ピアノの美しいリフと哀愁を帯びたシンセサイザーのビートが融合したこの曲は、西ドイツをはじめとするヨーロッパ各国のチャートで首位を独占し、日本でもディスコを中心に爆発的な人気を博しました。
この世界的大ヒット曲に着目した日本の制作陣が白羽の矢を立てたのが、当時資生堂のCMなどで独特の翳り(かげり)と洗練された都会美を放っていた小林麻美でした。しかし、日本語版『雨音はショパンの調べ』の制作にあたり、プロジェクトチームは原曲の持つ「明るくダンサブルな要素」を大胆に削ぎ落とす決断を下します。新川博による編曲は、テンポをわずかに落とし、シンセサイザーの音色に深いリバーブを効かせることで、まるで湿り気を帯びた雨の東京を思わせるアトモスフェリックなサウンドへと再構築されました。