護られなかった者たちへの真相と結末|犯人の動機と原作の違いを徹底解剖

護られなかった者たちへの真相と結末|犯人の動機と原作の違いを徹底解剖

護られなかった者たちへの真相と結末|犯人の動機と原作の違いを徹底解剖の全体像を分かりやすくまとめてご紹介します。

インターネットの検索窓には「護られなかった者たちへ 実話 理由」という関連語句が常に上位に浮上します。結論から言えば、本作で描かれた「福祉事務所職員を標的にした連続餓死殺人」はフィクションであり、実在する事件のノンフィクションではありません。それにもかかわらず実話と信じ込まれる背景には、作中で描かれた「孤立死のシチュエーション」が、過去に日本国内で発生した複数の痛ましい現実と酷似している点にあります。

社会福祉関係者や報道関係者の間でも度々引き合いに出されるのが、2012年1月に北海道で起きた「札幌市白石区姉妹孤立死事件」です。知的障害のある妹と同居していた40代の姉が、生活困窮の末に自宅マンションで相次いで餓死・凍死。姉は複数回にわたり区の保護課窓口を訪れて生活保護の相談をしていましたが、申請に至らないまま「水際作戦」的に対応された疑いが強く批判されました。室内の冷蔵庫には食材が一切なく、ガスや電気も止められていた凄惨な現場は、作中の遠島けいの最期と痛烈に重なり合います。

さらに遡れば、2007年の「北九州市生活保護受給餓死事件」も記憶に新しい事実です。生活保護を辞退させられた男性が、日記に「おにぎり食べたい」と書き遺して餓死した事件は、日本のセーフティネットの綻びを社会に突きつけました。原作者の中山七里は、これら現実の社会事件をつぶさに取材・リサーチした上で、制度の不条理を浮き彫りにするプロットを構築しています。つまり、殺人事件そのものは創作であっても、「餓死に至る福祉行政の構造的欠陥」は紛れもない現実の写し鏡であるがゆえに、実話と誤認する読者が後を絶たないのです。

中川 明日香
著者

中川 明日香

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。