夫の在宅時に限って妻の体調が急激に悪化する背景には、脳と自律神経の明確な生理的メカニズムが存在します。この現象の臨床的本質を2011年に世に知らしめたのが、循環器内科医であり大阪大学大学院などで教鞭を執った故・石蔵文信医師です。石蔵氏は男性更年期外来の現場で、診察に付き添ってくる妻たちの多くが原因不明の重度の高血圧やめまい、不整脈を患っている事実に着目しました。
妻が「夫の言動に対する恐怖・不満・緊張」を長期間にわたって我慢し続けると、大脳辺縁系が夫の存在そのものを「生命を脅かすストレッサー(外敵)」と誤認します。その結果、交感神経が異常に興奮し、アドレナリンやコルチゾールといったストレスホルモンが過剰分泌され続ける事態に陥ります。
これが日常化すると、血管が異常収縮して血圧が瞬時に20〜30mmHg跳ね上がり、慢性的な偏頭痛や耳鳴り、胃潰瘍、さらには突発性難聴や睡眠障害へと移行します。医療機関で精密検査を受けても「脳や心臓の血管に器質的異常はない」と診断され、原因不明のまま対症療法の降圧剤や睡眠導入剤を処方され続けるケースが後を絶ちません。根本的なストレッサーである「夫の言動・存在」に対する夫源病原因と対策を打たない限り、妻の肉体は文字通り内側から削られ続けてしまうのです。