メイク動画の通りにコスメを揃え、忠実にノーズシャドウを入れているにもかかわらず、なぜか「メイクが濃いだけの人」に見えてしまったり、かえって鼻の横幅が強調されたりする現象には、明確な視覚心理学的な理由が存在します。多くの人が陥っている最大の誤謬は、「影を濃く入れれば入れるほど鼻が細く高くなる」という思い込みにあります。
人間の視覚認識において、コントラストの強い濃い影は「そこに明確な立体物が存在する」というシグナルを脳に送ります。つまり、鼻筋を細く見せようとして眉頭から鼻先まで直線のシェーディングを引くと、周囲の皮膚との明度差が際立ち、かえって鼻というパーツそのものに視線を誘導してしまうのです。とりわけ鼻筋シェーディング初心者が直面しやすいこの現象は、メイクの現場で「輪郭の物質化」と呼ばれます。
さらに見落とされがちなのが、肌のベースカラーとシェーディング剤の「色相の不一致」です。日本人の黄みや赤みを含む肌トーンに対し、黄みの強すぎるブラウンや赤褐色のシェーディングを使用すると、陰影ではなく単なる「汚れ」や「くすみ」として知覚されます。ノーズシャドウ失敗しない理由を突き詰めると、技術の巧拙以前に、自らの肌アンダートーンよりわずかに明度が低く、かつ赤みを抑えたグレージュ系のニュートラルカラーを選定できているかどうかが勝敗の7割を決定づけています。