まず直視すべき冷酷な事実がある。日本の現行民法において、血のつながった実親と子の法律上の親子関係を完全に消滅させる制度は存在しない。例外は特別養子縁組など極めて限られたケースのみだ。法務省が管轄する戸籍制度にも「親子の縁を消去する」という記載項目は用意されていない。
しかし、一定の法的アプローチによって物理的・手続的な関係を遮断することは十分可能だ。その第一歩となるのが「戸籍の分籍」である。成人に達していれば、本籍地や現住所の市区町村役場に分籍届を提出することで、親の戸籍から抜け出し、自分を筆頭者とする新しい単独の戸籍を編成できる。これにより、親が独断で本人の戸籍謄本を取得する手続きを複雑化させることが可能だ。ただし、分籍を行っても法律上の扶養義務や相続権自体が抹消されるわけではない点には注意を要する。