横浜市港北区大倉山という、歴史ある閑静な住宅街のなかで、この建物は周囲の街並みと突飛に断絶することなく共存している。敷地内に足を踏み入れると、まるで古くからある路地迷路に入り込んだような感覚に陥る。くねりくねった中庭を通り抜ける風が心地よく肌を撫で、頭上からは切り取られた青空と緑が顔を覗かせる。
設計を担当した西沢氏は、敷地全体をひとつの大きな「家」と捉え、個々の部屋はその中に配置された庭や小部屋であるかのように扱った。外部と内部の明確な境目をあえて曖昧にすることで、居住者は単なる「一室の住人」を超えて、建物全体、ひいては大倉山という街の自然の営みとダイレクトにつながる感覚を得られるのだ。