東本昌平の名を不動のものとしたのが、1987年に連載を開始した金字塔『キリン』です。大型バイクに乗る中年男性と、高速道路で出会うポルシェ911との命懸けのバトルを描いた第一部「Point of No-Return(ポイント・オブ・ノー・リターン)」編は、当時のバイクブームに強烈な衝撃を与えました。
作中で主人公が駆るスズキ・GSX1100S カタナ(KATANA)は、単なる乗り物ではなく、男の意地や宿命を象徴する相棒として描かれました。「カタナに乗る=東本ワールドの住人」という図式が成立するほど社会現象化し、中古市場におけるカタナの相場を高騰させる原動力にもなりました。「バイクは危険で孤独な乗り物である」というシビアな現実から目を逸らさず、スピードの向こう側にある狂気と美しさを描いた作風は、今なお後続のクリエイターに多大な影響を与えています。