ネット上でまことしやかに語られる「新月のボイドタイムに願い事を書くとすべてが無に帰す」という噂。この言説の根底には、西洋占星術における「Void of Course(ボイド・オブ・コース=月がコースを外れている状態)」の概念が存在します。占星術において月は地球を取り巻く感情や潜在意識、日常のバイオリズムを司る天体ですが、次の星座(サイン)に入る直前に他の惑星と主要な角度(メジャーアスペクト)を一切結ばなくなる空白時間が定期的に発生します。これがボイドタイムの正体です。
占星術の伝統的な見解において、アスペクトを持たない月は「エネルギーの伝達ルートが遮断された状態」に例えられます。手紙に宛先が書かれていない、あるいは電波の届かない圏外でメッセージを送信しようとする状態をイメージするとわかりやすいでしょう。そのため、この時間帯に放たれた意図や誓いは、宇宙のサイクルと噛み合わず「現実化のレールに乗りにくい」と解釈されてきました。決して何者かによって願いが呪殺されたり、不幸が訪れたりするわけではありません。あくまで「投げかけたエネルギーが手応えなく空転しやすい」という天体力学的な解釈が、いつの間にか「願い事の無効化」という過激な言葉で一人歩きしてしまったのが真相です。