いまやスローライフの先駆者として知られる浜美枝ですが、その生い立ちは昭和の高度経済成長期における奇跡的なシンデレラストーリーそのものでした。東京都下町の紙器工場を営む家庭で育ち、中学校を卒業した後は東京急行電鉄(現・東急バス)の路線バス車掌として勤務していた経歴を持ちます。灰色の制服に身を包み、切符を切っていた少女の運命を大きく変えたのが、1959年に東宝が開催した映画『侍とお姉ちゃん』のオーディションでした。
彫りの深い目鼻立ちと手足の長い抜群のプロポーションは群を抜いており、東宝に入社するや否や「東宝スリーペット」(浜美枝、星由里子、田村まゆみ)の一角として猛烈なプロモーションを受けます。デビュー直後から『若い季節』『キングコング対ゴジラ』など年間十数本ものハイペースで主演作・話題作をこなしていきました。
そして1967年、弱冠23歳にして世界最高峰のメガヒットシリーズ『007は二度死ぬ』のボンドガールに抜擢されます。日本を舞台にした同作で、海女のキッシー鈴木役を演じた浜美枝のエキゾチックな美貌は、ロンドンやニューヨークをはじめとする海外メディアでも大きく取り上げられ、国際的な映画スターの座を掌中に収めました。当時のスチール写真やグラビアに写る彼女の表情は、洗練されたモダニズムと少女特有のあどけなさが同居しており、令和の若者がSNS上で見ても「驚異的なビジュアル」と称賛されるほどの圧倒的な存在感を放っています。