結論から明かすと、パナソニックやシロカ、ツインバードなどの一般的な家庭用ホームベーカリー(以下、HB)の内釜に生米と水をそのまま入れてスイッチを押しても、生米パンが焼き上がることは絶対にありません。「普通のHBで生米パンが焼けた」と発信しているケースを綿密に取材・調査すると、例外なく「事前に生米を浸水させ、ミキサーやブレンダーで完全に液状ペースト(米液)にしてからHBのパンケースに移している」という作業工程が隠されています。
なぜ本体単体では不可能なのか。その理由は、小麦粉や市販の微細米粉を混ぜ合わせるために設計されたプラスチック製やアルミダイキャスト製の「パン羽根」の構造にあります。一般的なHBのモーター出力と羽根の形状は、固い生米の粒をミクロン単位まで擂(す)り潰すほどのトルクや刃の鋭利さを備えていません。乾燥した米粒をそのまま投入して回転させれば、内釜のフッ素コーティングが傷だらけになるだけでなく、モーターの焼き付きや羽根の破損といった致命的な故障を引き起こします。
専用機なしでふんわり仕上がるという噂の正体は、「ミキサーによる徹底的な微細化」と「ホームベーカリーの温度管理機能(発酵〜焼成)」を分担させたハイブリッド調理です。HBはあくまで「型」と「安定したオーブン」として利用されているのが実態であり、単体で完結する魔法の裏ワザが存在するわけではないという冷徹な事実を、まず認識しておく必要があります。