漢字の筆順には、単なるルールを超えた数千年の歴史的理由が存在します。「歩」という文字のルーツを紀元前の甲骨文字や金文まで遡ると、極めて合理的かつ情景豊かな原初のかたちが姿を現します。
部首である「止」は、本来「足の指と踵を描いた足跡」の象形です。そして「歩」という漢字は、「止」が前後に2つ並んだ会意文字として誕生しました。つまり、左足を一歩前へ出し、続いて右足を一歩前へ踏み出すという「人間の歩行そのもの」を足跡の連続によって視覚化した文字なのです。
歴史の変遷の中で、下の「止」が左右反転し、篆書から隷書、楷書へと移り変わる過程で形が簡略化され、現在の下部の形状に変化しました。つまり、下半分のパーツは「少」とは一切の血縁関係がありません。右足の足跡が変化した記号であると知れば、「なぜ右下にしっかりとした点(8画目)が残されているのか」という疑問も自然と氷解します。