この一連のスキャンダルが単なるハラスメント疑惑に留まらず泥沼化した背景には、2022年10月に逝去した共同創業者ディートリヒ・マテシッツの死後に生じた社内の激しい権力闘争が存在していました。
オーストリア本社(オリバー・ミンツラフCEOやモータースポーツアドバイザーのヘルムート・マルコ)がチームへの関与と統制を強めようとしたのに対し、ホーナーはチーム運営の全権を掌握し続けようと画策。この主導権争いにおいて決定打となったのが、レッドブル株の51%を保有するタイの富豪チャルーム・ユーウィッタヤー氏の存在でした。オーストリア側がホーナーの更迭を検討した際、過半数を持つタイ側の創業家がホーナーを全面支持したことで、解任劇は土壇場で阻止されたのです。
この対立構造の中で最も先鋭化したのが、エースドライバーであるマックス・フェルスタッペンの父、ヨス・フェルスタッペンによる公然の批判でした。ヨスは海外メディアに対し「ホーナーが留まるならチームは引き裂かれ、破裂する」と発言。マックス自身も「マルコ顧問がチームを離れるなら自分も留まることはできない」と発言し、メルセデスへの移籍交渉が取り沙汰されるなど、チームの基盤を揺るがす事態へと発展しました。