妨害排除請求権を行使するにあたっては、民法および判例上確立された明確な要件を満たす必要があります。請求が認容されるための基本的な妨害排除請求権の要件は、主に以下の2点に集約されます。
第1に、請求者が対象物件に対して正当な所有権(本権)を有していること。第2に、相手方が正当な権原(賃借権や地役権など)を持たずに、現にその所有権の行使を客観的に妨害している事実が存在することです。ここで極めて重要なのは、相手方に故意や過失(帰責性)が存在しなくても請求が成立するという点です。過失の有無を問わず、妨害状態という客観的事実が存在するだけで排除を求めることができます。
実務上の最大の争点となるのが妨害排除請求権の費用負担です。違法に放置された残置物や越境物の撤去費用は誰が出すべきなのかという問題について、法学上は長年行為請求権説と忍受請求権説の議論が交わされてきました。
行為請求権説は、妨害者に対して「妨害状態を除去する積極的な作為義務」を認め、その費用も妨害者が全面的に負担すべきとする見解です。一方の忍受請求権説は、所有者が自ら撤去作業を行うことを相手方に受忍させる(忍受させる)権利にとどまり、撤去費用は所有者側がいったん負担したうえで、相手方に過失がある場合に限り不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)によって事後回収すべきとする見解です。
判例・実務の主流においては、人為的に妨害状態を作出した相手方に対しては、原則として妨害者自らの費用負担による撤去を命じる傾向が定着しています。ただし、自然災害等によって意図せず発生した土砂の流入など、不可抗力が絡む事案では、費用負担の所在をめぐって高度な法的判断が下されます。