閉館から一定の年月が経過した今もなお、インターネットの掲示板やSNSでは「乃木温泉なごみが別の運営会社によって再オープンするらしい」「大手温浴チェーンが買収を検討している」といった書き込みが散発的に見られます。しかし、取材と現地調査を進めると、こうした噂には大きな誤解と現実とのギャップが存在することが判明しました。
第一に、「温浴施設としての再開計画」について、自治体や商工会議所、不動産関係者の間で具体的な事業認可やリニューアル工事が進行している事実は確認されていません。温浴施設の建物を居抜きで再利用する場合でも、一度稼働を停止した温泉配管のスケール詰まりやポンプの劣化、ボイラーの耐用年数超過により、再稼働には新築に近い莫大な初期投資が求められます。投資回収の見通しが立たない状況下で、地方都市の居抜き温泉に名乗りをあげる事業者は極めて限られているのが実情です。
第二に、かつて販売されていた回数券の返金対応に関する誤解です。営業終了発表当時、施設側は店頭および指定窓口にて期日を定めた未使用回数券の払い戻し受付を実施しました。しかし、数年が経過した現在、公式な返金受付期間はすでに満了しています。「引き出しから当時の回数券が出てきたが返金できるか」という相談がネット知恵袋等で見受けられますが、運営法人の清算手続きや規約に基づき、現時点での換金は法的に対応困難となっています。
第三に、2026年現在の跡地状況です。乃木町の現地は、建物解体や敷地の整地、将来的な土地利用に向けた手続きが進められており、かつての看板や賑やかなエントランスの面影は失われつつあります。立地としては函館市内の主要幹線道路へのアクセスも良い住宅街であるため、商業施設、医療・介護福祉施設、あるいは分譲宅地や集合住宅への転用が現実的な選択肢として取り沙汰されています。