メリーバッドエンディングという言葉が急速に広がった背景には、従来の「ハッピー」と「バッド」という二元論に収まりきらない複雑な心理描写の需要がある。登場人物たちが互いの世界のすべてとなり、他者からの評価や社会的な正当性を完全に放棄して選んだ結末。外部の人間から見れば「共依存の果ての破滅」や「閉じられた絶望」に過ぎない。
しかし、当事者たちの内面においては、これ以上ない「満たされた完結」を迎えている。この落差こそが読者の感情を激しく揺さぶる。倫理的な正しさと個人の幸福が衝突したとき、後者が優先されることへの背徳感。自分だけの秘密の部屋に閉じこもるような密室の幸福感は、整然とした大団円にはない独特の甘美さを放っている。