産業現場で圧倒的な導入実績を誇るのが、デュポン(DuPont)と重松製作所の2大ブランドです。両社はそれぞれ異なる強みを持ち、現場の用途に応じて明確に使い分けられています。
デュポンが展開する防護服シリーズは、高密度ポリエチレン不織布を用いた「タイベック(Tyvek®)」を筆頭に、バリアフィルムを多層ラミネートした「タイケム(Tychem®)」シリーズまで幅広いラインナップを誇ります。タイベックは極めて軽量でありながら微粒子バリア性に優れ、粉じん作業や塗装、アスベスト除去現場で標準装備として定着しています。一方、濃硫酸や有機溶剤などの強毒性液体を取り扱うプラントでは、最高クラスの耐薬品性を備えた「タイケム2000/6000/10000」が採用され、後述する透過速度データに裏打ちされた高い信頼性を獲得しています。
一方、日本の呼吸用保護具のパイオニアである重松製作所は、国内作業者の体形や法規制に完全にフィットした製品設計が強みです。重松の化学防護服は、同社製の自給式空気呼吸器(SCBA)や全面形防毒マスクとの気密接合性が極めて高く設計されています。特に消防隊や自衛隊、化学コンビナートの自衛防災組織向けに展開されるレベルA対応の気密服は、激しい救助動作でも視界が曇りにくい特殊ワイドバイザーを採用するなど、現場の人間工学に基づいた細やかな改良が施されています。
価格相場と耐用年数の目安としては、使い捨て(ディスポーザブル)タイプのタイベックが1着あたり1,500円〜3,500円前後であるのに対し、タイケムの上位グレードや重松のレベルC対応服は1着1万5,000円〜4万円程度。さらにレベルA対応の完全気密スーツになると、定期点検と気密試験を行いながら数年間使用するタイプで1着30万円〜80万円超という価格帯になります。