「仕事帰りにゆっくり買い物をしたいのに、21時閉店は早すぎる」という消費者の不満がありながらも、コスモス薬品が頑なに21時閉店を崩さない背景には、流通小売業界屈指の緻密なコスト削減ロジックが存在します。公式決算資料や業界分析データから見えてくるのは、エブリデー・ロープライス(EDLP=毎日安売り)を成立させるための3つの構造的理由です。
1. 深夜割増人件費と光熱費の徹底的な圧縮
労働基準法上、22時以降の勤務には基本給の25%以上の深夜割増賃金が発生します。さらに、大型ロードサイド店舗の照明や空調を深夜まで稼働させれば、近年の電気料金高騰下では莫大な固定費が重くのしかかります。コスモス薬品は21:00に営業を終え、従業員が21:30前後には完全退勤できる仕組みを構築することで、深夜営業に伴う固定費の跳ね上がりを未然に防いでいます。
2. パート・従業員の定着率向上と人手不足の回避
小売業界全体が深刻な労働力不足に直面するなか、21時完全閉店は従業員募集において極めて強いアドバンテージとなっています。深夜勤務がない勤務体系は主婦層や学生にとって働きやすく、離職率の抑制につながります。結果として採用コストや研修コストを低く抑えられ、盤石な現場オペレーションを維持できるのです。
3. 現金決済のみの徹底が生み出す極限のローコスト体質
21時閉店と表裏一体をなすのが、コスモス名物ともいえる現金払いのみを徹底する経営方針です。一般的なドラッグストアでは、クレジットカードやQRコード決済の導入により売上の2〜3.5%程度を手数料として決済事業者に支払っています。しかし、コスモス薬品はこのキャッシュレス決済手数料をゼロに抑え、さらにキャッシュレス導入に伴う端末導入費や通信トラブルの対応コストすら排除しています。
「深夜営業をやめることで人件費と光熱費を削る」「キャッシュレスを排除して決済手数料をゼロにする」。この2軸によって浮かせた巨額の経費を、そのまま商品の販売価格に還元しているからこそ、競合他社を圧倒する低価格が実現しています。