涙袋の形成を希望した患者が最もショックを受けるのが、目の下に太い芋虫やナメクジが張り付いたような違和感、そして皮膚が青黒く透けて見えてしまうトラブルです。この異様な状態を引き起こす背景には、解剖学的な注入層の誤りと過剰な注入量が密接に関わっています。
まず、涙袋ヒアルロン酸がナメクジ化する理由の根底にあるのは、限界を超えた注入量です。本来、理想的な涙袋を形成するために必要な注入量は、片目わずか0.05cc〜0.15cc程度という極小の世界です。ところが、「もっと大きくしたい」という患者の要望に流されたり、注入圧のコントロールが甘い医師が施術を行ったりすると、0.3cc以上もの製剤が一度に押し込まれます。その結果、製剤自体の重みと眼輪筋の収縮圧によってヒアルロン酸が下垂し、横幅ばかりが間延びした「涙袋ヒアルロン酸の入れすぎによるパンパン状態」が完成してしまうのです。
一方、目の下が青白く透けてクマが悪化したように見える状態は、物理学的な光の散乱によって説明されます。これが涙袋ヒアルロン酸のチンダル現象の真相です。下まぶたの皮膚は厚さ約0.5mm前後と、人体の中で最も薄い部位の一つに数えられます。本来であれば眼輪筋の深層や筋層内に繊細に留めるべきヒアルロン酸を、誤って皮膚の直下(浅い皮下組織)に注入してしまうと、外からの光が半透明のヒアルロン酸ゲルを通過する際に短波長の青い光だけが強く散乱されます。これが皮膚表面から青黒い影として浮き上がり、メイクでも隠しきれない異様な透け感を生み出します。