漢字の構造を紐解くと、なぜ「草冠」ではなく「又」が部首に据えられているのかという疑問が生じます。古代文字の字形変遷をたどると、文字に込められた古代人の世界観が浮き彫りになります。
漢字学の大家である白川静氏の字説をはじめとする甲骨文字・金文の研究資料によると、「叢」の字形は複数の構成要素から成立しています。上部は「並んだ草木や器物」、中央には多くの物を手でつかみ取る動作を示す「取」、そして下部には「右手」を象徴する「又」が配置されています。
すなわち、もともとは「散らばっている草木や木片を手でひとつに寄せ集める行為」を具象化した会意文字でした。物が雑然と群がり集まる様子を表す動詞から派生し、次第に「草木が自然と密生している場所(=くさむら)」そのものを指す名詞へと意味の重心が移行した経緯があります。部首が植物由来の「艸部」ではなく手の動作を示す「又部」に分類される理由は、この「集める」という動態的意味が起源にあるためです。