三保の松原を訪れる旅人の多くが抱く最大の目的は、「松林・海・富士山」が織りなす絵画のような構図を目に焼き付けることです。しかし、現地に立てば無条件にあの光景が広がっているわけではありません。富士山は気象条件によって極めて気まぐれにその姿を隠します。
気象観測データおよび現地の定点観測記録によると、三保半島から富士山がくっきりと視認できる確率は、季節と時間帯によって劇的な格差が存在します。年間のうち最も視認率が高まるのは、大気が乾燥しチリや水蒸気が少ない11月から2月にかけての冬季です。この時期の晴天時における冠雪の富士は、息をのむ美しさを誇ります。
1日の中での時間帯選びにおいては、「早朝(日の出直後)から午前9時頃まで」が最大の勝負どころとなります。太陽が東から昇る午前中は、順光に近いアングルで富士山の山肌に光が当たり、白雪と青空のコントラストが鮮明に浮かび上がります。一方、午前10時を過ぎると地表の気温上昇に伴って駿河湾から水蒸気が立ち上り、雲が湧きやすくなるだけでなく、午後は完全な逆光ポジションとなるため、山影が白く霞んで見えにくくなります。