ネット上の掲示板やSNSでは、年齢制限に関して「17歳以上に引き上げられたら、女子は誰も高難度ジャンプ(4回転やトリプルアクセル)を跳べなくなるのではないか」「ロシア勢を排除するための西側の政治的陰謀だ」といった極端な言説が散見されます。しかし、現場のデータと競技の実態を照らし合わせると、これらは明らかな誤解であることがわかります。
第一の誤解である「大技の消滅」についてですが、確かに未成熟な体型に依存した回転速度だけの4回転ジャンプは影を潜めました。しかし、適切な筋力トレーニングとバイオメカニクスに基づいた技術を習得した選手は、20代を迎えてもトリプルアクセルを跳び続けています。体幹の強さと跳躍力を科学的にビルドアップすることで、大人の身体になっても高難度ジャンプを維持できることが実証されつつあります。
第二の誤解である「特定国の排除」という陰謀論も実態を捉えていません。ISUの総会で引き上げに賛成したのは全体の80%を超える加盟国であり、その中には自国に有望なジュニアを抱える国々も多数含まれていました。最大の目的は、10代前半で燃え尽き、引退後に深刻な後遺症に苦しむ元選手たちの救済です。身体が成熟したスケーター同士が競い合うことで、演技構成点(スケーティング技術、表現力、音楽の解釈)の重要性が再認識され、「子どもの跳び箱大会」と揶揄された時代から「真のフィギュアスケート」への回帰が果たされています。