この物語は、主人公である16歳の少年・堤進が日々を記録する日記体小説という形式をとる。受験の失敗、兄との対立、そして演劇という未知の世界への挑戦。彼が心の葛藤をノートに吐き捨てる中で、日本文学史に残る屈指の名言が生まれる。「カルチベート(耕作)することだ。自己を、カルチベートしろ」という自戒の叫びである。
さらに進は語る。「学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。けれども、全部忘れてしまっても、そのあとに残るカルチヴァ(教養)こそが大切なのだ」と。試験のための丸暗記や、他人に誇るための知識など何の意味もない。知識が削ぎ落とされた後に、血肉として精神の底に沈殿するものこそが真の教養である。学歴や資格の数値化に追われる現代社会において、この教養の本質を突いた指摘は驚くほど鋭い。