肉売り場における価格差や味の違いを論理的に理解するために、品種ごとの飼料設計、肥育期間、相場感を整理した比較データを確認しておこう。食肉卸売市場における取引実態と店頭価格の動向は以下の通りだ。
肉質とサシの違いを左右するのは、遺伝的な素質と肥育期間の長さだ。黒毛和牛は筋肉組織の間に微細な脂肪(モノ不飽和脂肪酸)を蓄積しやすい特殊な遺伝子構造を持つ。さらに出荷までに30ヶ月前後の長い年月と高カロリーな穀物飼料を投与されるため、融点が25℃前後と低く、人肌で溶ける極上のサシが完成する。
価格差の理由もこの肥育年数と飼料コストに直結している。肥育期間が8〜10ヶ月長くなるだけで、牛1頭あたりの餌代、畜舎の管理費、獣医師によるヘルスケアコストは跳ね上がる。さらに繁殖農家が子牛を産ませてから出荷するまでのサイクル全体を考慮すれば、和牛の取引価格が乳用肥育牛の2倍から3倍に達するのは必然的な経済原則と言える。
なお、店頭でよく見かける牛肉の格付け等級A5という呼称は、公益社団法人日本食肉格付協会が定める歩留等級(A〜C)と肉質等級(1〜5)の組み合わせだ。「A」は1頭の牛から取れる可食部分の割合(歩留まり)が標準以上であることを示し、「5」は脂肪交雑(BMS No.8〜12)、肉の色沢、締まり・キメ、脂肪の質がいずれも最高水準であることを示す。国産牛(交雑種等)でも極めて稀にA4やA5が出るケースはあるが、格付けの頂点に君臨するA5の大半は血統管理された黒毛和種によって占められている。