「物心ついた頃から小指の爪がほとんどない」と語る人は多く、インターネット上でも「遺伝だから諦めるしかない」といった言説が散見されます。しかし、皮膚科学的な見地から検証すると、完全な先天性異常として爪が欠損する「先天性無爪(むそう)症」や極端に爪が小さい「小爪症」の発生頻度は、人口の0.01%未満という極めて稀な症例に過ぎません。小指の爪がない原因の大半は、幼児期から現在に至るまでの靴環境や歩き方の癖によって引き起こされた「後天的な物理現象」です。
臨床現場において、爪そのものが消失したように見える背景にはいくつかの代表的な疾患や皮膚トラブルが存在します。代表的なものが以下の疾患です。
爪を作る根本組織である爪母への血流不全や強い慢性圧迫によって爪甲が薄く小さくなる爪甲萎縮症(そうこういしゅくしょう)、爪が爪床から浮き上がって剥がれてしまう爪甲剥離症(そうこうはくりしょう)、そして白癬菌が爪内部で増殖してボロボロと崩れてしまう爪白癬(爪水虫)です。特に小指は血流が滞りやすく、靴の内部で蒸れと強い摩擦に晒され続けるため、これらのトラブルが複合的に進行して爪の退化を招きます。「爪が完全に消えた」と感じる場合でも、皮膚科での爪の変形治療や顕微鏡検査を受けると、角質の下に萎縮した爪甲が残存しているケースがほとんどです。