カスタムショップのメカニック取材やコミュニティの生の声を集約すると、シグナスXの排気量アップに踏み切って後悔するオーナーには明確なパターンが存在します。もっとも典型的な失敗は、シリンダーとピストンだけを交換する「ポン付け」を行い、燃料噴射量や点火時期の補正を放置してしまうケースです。
排気量を拡大したエンジンは吸入空気量が増加するため、純正ECUのままでは混合気が極端に薄い「リーン状態」に陥ります。その結果、燃焼室温度が異常上昇してピストン上部が溶損するデトネーション(異常燃焼)を引き起こし、慣らし運転の最中や全開走行時に一瞬でエンジンがロックするシグナスXのボアアップ焼き付きトラブルへ直結します。
また、走行性能の劇的な変化に満足したものの、「通勤スクーターとしてのランニングコストが跳ね上がった」「法定点検や任意保険の切り替え手続きが想像以上に煩雑だった」といった維持管理面でのギャップに直面し、手放してしまう例も少なくありません。パワーアップの裏にあるメカニズムのリスクと法的手続きを把握せずに勢いだけで着手することが、後悔を生む根本的な要因となっています。