澤瀉屋の歴史は、常に革新と挑戦の連続であった。その立役者であった市川猿之助が舞台から離れた現在、一門の精神的支柱であり実質的なリーダーとしての役割が、市川中車の双肩に重くのしかかる。従兄弟として深く結ばれていた二人の絆と、共に描いた澤瀉屋の理想像。それを途絶えさせるわけにはいかないという強い執念が、現在の彼の演技を動かしている。
澤瀉屋独特の宙乗りやスピード感あふれる演出、古典に新たな息吹を吹き込む「スーパー歌舞伎」の精神。これらを継承し、次世代へと繋ぐためには、中車自身が古典演目での揺るぎない評価を確立しなければならない。身を切るようなプレッシャーのなかで、彼は澤瀉屋の看板を背負い続けている。