そもそも、なぜカプコンは歴代の対戦格闘ゲームにおいて、ここまで執拗に敗北時の表情を描き込んできたのでしょうか。その背景には、アーケードゲームのビジネスモデルとプレイヤー心理を計算し尽くした演出意図がありました。
90年代初頭のゲームセンターにおいて、ゲームオーバー時に表示されるコンティニュー画面は、プレイヤーにもう100円を投入させるための極めて重要な導線でした。ダメージを受けて無残に歪んだ顔を表示し、10秒のカウントダウンを刻むことで、「このまま負けた姿で終わりたくない」「次は絶対に勝つ」という悔しさとリベンジ精神を強烈に刺激したのです。
さらに、カプコンのクリエイター陣が意図したのは単なるリアルな暴力描写ではありませんでした。劇画的なシリアスさと、どこかコミカルで愛嬌のあるカートゥーン的なデフォルメを融合させることで、残酷になりすぎず、敗北の悔しさを笑いに変えてリトライへ導く絶妙なバランスを実現させました。『ファイナルファイト』や『ヴァンパイア』シリーズなどにも受け継がれたこの負け顔演出は、カプコン格ゲーの象徴的な文化として確立されていきます。